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前十字靭帯損傷のリハビリは術前から始まっている!?プロが教える失敗しないリハビリのポイント


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実は、手術前のリハビリは術後の膝の状態に大きく影響するのです!

前十字靭帯損傷の受傷後、診断を受けすぐに手術になることはほとんどなく、膝関節の機能をある程度改善した上で手術を行っていきます。
膝関節の機能不全がある状態で手術を行うと、術後の経過が良くなくスポーツ復帰までに時間を要することが多くなるからです。
今回は前十字靭帯損傷の術前の必要性、機能改善のポイントについて解説していきます。

なぜ術前リハビリが必要か?

前十字靭帯の損傷をすると、膝関節内では前十字靭帯は出血し、悪ければ半月板の損傷、骨挫傷が起こります。
膝関節内で出血し、関節内の炎症が起こることにより膝関節は腫脹します。
それにより、膝関節の可動域の制限が起こったり、二次的に大腿四頭筋の筋出力も低下したりしていきます。
さらに膝関節の機能が低下している状態で、日常生活を送るため荷重をかけなかったり、膝関節を動かさなかったりと悪循環となり、可動域制限や筋力低下を助長していきます。

そんな状態で手術を行うとどうなるでしょうか?
術前の状態と術後の経過についていくつかの研究があり、そこでは術前で可動域制限や筋力低下を有していると術後の可動域や筋力の改善が遅れ、スポーツ復帰までに期間を要すると報告されています。
早期にスポーツ復帰をするためには、術前から適切なリハビリが不可欠なのです。

術前のリハビリでは、
・膝関節の炎症の抑える
・膝関節可動域の改善
・膝関節周囲筋の筋力強化
・日常生活動作の改善(特に歩行)
を目的として行っています。

ポイント①
膝関節の炎症を抑える

受傷直後は皆さんご存知だと思いますが、RICE処置(安静、冷却、圧迫、挙上)を行います。
RICE処置の目的としては、過剰な腫脹を起こさせないことです。
前述したとおり過剰な腫脹は可動域制限や筋力低下、さらに疼痛をもたらします。
それらの機能障害を少なくするためにもRICE処置での炎症管理が必要なのです。
実際に受傷直後は
① 仰向けになります
② アイスパックをバンテージなどで圧迫しながら膝関節に固定します
③ 心臓よりも膝が高い位置になるように置きます。
④ そのまま20分程度行ったら、その後は2時間おきに同様に行っていきます。
炎症は48~72時間程度続くと言われているので3日間程度行えるのが理想です。
普段の生活を送るときは、膝関節をバンテージや弾性包帯などで圧迫したほうが膝関節の腫脹が増加せずにすみます。

炎症が軽減してきたら、疼痛の具合に合わせて可動域エクササイズや筋力トレーニングを行っていきます。

ポイント②
膝関節の可動域改善

炎症や前十字靭帯の出血により膝関節は腫脹していたため膝関節の曲げ(屈曲)伸ばし(伸展)が行いにくくなります。
膝関節の可動域改善では膝を伸ばしきる(完全伸展)がポイントになってきます。
術前の膝関節伸展の可動域制限があると、術後も伸展の可動域制限が出やすくなるとの報告があります。
膝関節の完全伸展がでないことで、疼痛が発生しやすくなったり、日常生活での動作でも支障が出てきたりしやすくなります。
手術の前には必ず、完全伸展ができるようにしておきましょう。

可動域の改善のためには可動域エクササイズを行っていきます。
可動域エクササイズのポイントとしては力を抜くことです。
受傷直後は炎症による疼痛があり、炎症を軽減させるためRICE処置をしていたのであまり動かしていなかったと思います。
動かしていなかったことで、疼痛が出てきたりそれに対して恐怖心が出てくるのでどうしても力が入ってしまいます。
力が入っている状態では、関節を動かした際に筋肉がこわばってしまうので関節を動かしにくくなってしまいます。

実際の可動域エクササイズの方法としては
 <屈曲可動域エクササイズ(ヒールスライド)の方法>
① ベッドや床に膝を軽く伸ばした姿勢で座り、大腿部を手で持って股関節を曲げます
② 膝下の力を抜くことで足の重さで徐々に膝が曲がっていきます
③ 痛みの具合に合わせて徐々に膝を曲げていきましょう

 <伸展の可動域エクササイズ>
① うつ伏せになり膝を少し曲げた姿勢になります。
② 膝の下にタオルなどを置き、膝を伸ばして力を抜きます。
③ 最初は膝下にタオルを厚くするなどして、徐々に伸展の可動域を伸ばしていきましょう

ポイント③
膝関節周囲筋の筋力強化

前述した通り、膝関節の腫脹によって二次的に大腿四頭筋の筋出力の低下が起こると言われています。
膝関節周囲筋の筋出力が低下していると、膝関節が不安定となるため「膝崩れ」のリスクも高くなります。
疼痛や腫脹の具合を見ながら早期から筋力強化をしていくことが必要です。

<大腿四頭筋(Quad)セッティング>
膝を伸ばした角度で、大腿四頭筋に力を入れるトレーニングです。
目的としては膝が完全伸展位で力が入るように行います。
特に大腿四頭筋の中の内側にある「内側広筋」という筋肉が収縮するかを確認します。

(方法)
① 床やベッドで膝を伸ばした姿勢を取ります
② 膝を伸ばすように大腿四頭筋(大腿前面)に力を入れます
③ 膝蓋骨上部内側の「内側広筋」に力が入っているかを確認します
④ 足関節を背屈回外(つま先を内側に向ける)や力を入れる側の下肢に荷重をかけたりすることで「内側広筋」に力が入りやすくなります



<レッグカール>
膝を屈曲する筋肉である「ハムストリングス」のトレーニングです。
前十字靭帯損傷ではハムストリングスの強化をすることが推奨されています。
深い屈曲角度でも収縮できるのが望ましいです。

(方法)
① うつ伏せになります
② ハムストリングスに力を入れながら膝を曲げていきます
③ 膝を曲げきったところで足首を動かします
④ 足首を動かしても膝が動かないようにすることでハムストリングスを使うことができます


この2つのトレーニングは膝の可動域エクササイズと併用して行うことで、可動域の改善につながっていきます。
その他にも股関節周囲のトレーニングなどを行います。
また、日常生活で椅子からの立ち上がりなどの動作改善のために、スクワットなどを行います。
スクワットでは左右へ均等に荷重をかけられるか?股関節を曲げられる(屈曲する)か?などのフォームの修正を行い、正しくハムストリングス・大腿四頭筋が使えるよう促し膝関節の負担を減らしていきます。

ポイント④
日常生活動作の改善(特に歩行)

可動域がある程度改善し、膝関節周囲の筋力強化も行えるようになったら日常生活動作の改善を行っていきます。
特に歩行は受傷側に荷重が乗せることができず膝を固めた状態で歩きやすくなります。
日常生活で行う歩行でも正しいフォームで行うことで、可動域改善や筋力強化につながっていきます。
歩行の大事なポイントとしては

・膝が完全伸展した状態で片脚で支えられているか?
・足を前に降り出すときに膝の屈伸ができているか?


を確認しています。
他にもポイントはまだありますが、この2つは特に大事なポイントです。



今回紹介したリハビリは手術後にも必ず行うリハビリです。
術前に行っておくことで、術後のリハビリがスムーズに進んでいきます。
早期スポーツ復帰するためにも積極的に術前からリハビリを行いましょう。

解説 ACTIVATE GYM トレーナー 小枝創

理学療法士/JSPO-AT
長年、整形外科にて多くの患者様のリハビリを担当。痛みのある方からプロスポーツ選手まで幅広い方に専門的なトレーニングを提供している。
また、高校・大学バスケを中心にチームトレーナーとしても活躍中。

2010〜2013 医療法人社団 
       みやもと医院
2013〜2019 医療法人社団 順仁会 
       きたはらクリニック
2019〜現在 ACTIVATE GYM

2013〜現在 浜松学院高校 
       男子バスケットボール部トレーナー
2020〜現在 浜松学院大学 
       男子バスケットボール部トレーナー